昨年、我々の法人UDCで開催した、ジム・エバンス アンパイア・クリニックに参加してくれた、山梨のプロを目指してがんばっている若手審判からこんな相談を受けました。それは、”抗議への対処の仕方”です。審判をしていないかたにも、どのような気持ちで抗議を受けているかを知って欲しいと思ったのでここに書かせてもらいます。
彼にとって初めての強い抗議だったようで、少し動揺したといっていました。これは、当たり前なことで、全然動揺しないほうが、これ以降の成長が期待できないでしょう。審判をしている方ならおわかりだと思いますが、もし、間違えた判定を下してしまった時に、大抵は、自分でミスしてしまったことをわかっているのです。この時心の中で「あ痛っ〜、やっちゃった。さて、どうやって言い訳しようかなあ。」というのが本音です。ここで、ストライク・ボール、アウト・セーフなどの判定は、判定を変更することができないのです。審判の本音として、「すみません、間違えたので判定を変えます。」といえたらどんなに楽かと思うことがあります。しかし、これをしだしたら、何でもかんでもクレームがあるたびに判定を変えなければならなくなり、試合にならないのです。そこで、ルールで”審判が下したものが、最終的な判定である。”と謳っているのです。ですから、このような場面では、審判は、”うそつき”になりきらなければならないのです。立場上、本音をいえないということを皆さんに知っていて欲しいのです。
彼からの質問の部分なのですが、対処には、コツがあります。まず、余計なことをいわない、ということが大事です。人間心理として、自己防衛のために、つい、いろいろ言葉を重ねてしまいます。そうすると相手が、その言葉尻をついて他のことで文句を言い出します。最低限、説明しなければならない事は、ありますが、それ以外は説明する必要がありません。「走者の足のほうが早かったです。」とか、「〜見ました。」「〜と判定しました。」そして、説明する為の”知識”が必要です。それが、ルールを理解するということです。これが、説明できなければ、頭の中でわかっていても意味がないのです。ルールブックにある内容を、審判ではない人物(ルールをよく理解していない人)でもわかるように説明できなければいけません。その為に我々は、ルールを勉強しておかなければならないのです。
一通り説明したら、「充分、説明しましたので、これ以上の抗議は、受け付けません。」と言います。大抵これでも納得できないと言ってくるでしょう。そうしたら、これ以上抗議を続けると退場になるということを告げます。(警告になるのです。)数度、このようなやりとりをし、後は”退場!”となります。これは、”試合進行の為のルール”なのです。
審判以外の皆さんには、”言い訳”のように聞こえると思いますが、我々審判は、決してこれらのルールに甘えている訳ではないことも信じてください。日々、間違いを犯さないように、身を削る思いで努力をしています。ただ、以上のようなことも知っていて欲しいと思います。退場とは、試合を進行させるためのルールなのです。野球ゲームには、相手チームやファンが抗議の時間を退屈して待っているということも知っておいて下さい。
この記事へのトラックバック



追伸 旅行はハワイで、ゴルフ三昧です。ですが、スコアーは94が最高で、今一でした。。。
私としては、仮にミスがあっても全ての審判には毅然とした態度で、自信をもって対処していただきたいと思います。(勿論、ルールの誤用、解釈の誤りは別ですが)
ジャッジは審判の専行事項です。堂々とした態度でのぞめば、トラブルが少なくなるケースもあるのでは無いかと思います。
それと、一選手やコーチからの抗議をなぜプロ野球ではあんなに認めているのか解せません。勿論、現場では現場なりのご苦労があるのでしょうが、ルールを厳格に適用していただいたいものです。
日本の野球で抗議が時間をかけて行われた際など、マイクロフォンを通して観客に説明しますよね。あれを見て、「アメリカだったら絶対ありえない」って夫(日本野球大好き米国人)が言います。MLBでは審判の位置づけがもっと高いところにあり、判定が明らかにミスであっても覆ることはなく、選手やコーチ・監督も形の上で抗議はしても覆らないことが前提でやっている。日本の審判はお行儀が良い感じ。物言い→協議→マイクロフォンで説明という大相撲の影響も受けているのではと言っていました。
私は何を隠そう?約30年来のカープファンです。先日ブラウン監督がベースを引っこ抜いて投げました。ちょうどスポーツニュースの録画に失敗して見逃しましたが、新聞記事によれば抗議自体は紳士的で、ベースを投げたのもパフォーマンス的な意味合いがあったようです。ブラウン監督は一度日本でプレーしていたので、日本野球とアメリカのベースボールの文化の違いを知っててやっているのかもしれません。今回の抗議を「判定は覆らない」と判っていてやったのか、それとも「日本だから覆る可能性もある」と考えながらやっているのか、どうなのかなって今思いました。まあでも、マイナーリーグで監督をやっていたときも抗議・退場を繰り返してたそうだから、カッとなるタイプなんでしょうね。今回のは、投手と監督退場後に残った選手が(監督の思惑通り)一致団結して勝ちました。そういうこともあるので、判定が覆らないとしても、抗議を一切受け付けないとか、機械に審判をさせるといった方向には行かないと思うし、行って欲しくないです。
コメントありがとうございます。ハワイでゴルフ三昧ですか。いいですね。平林家の夢は、メジャーの審判になってハワイに住むことなのです。94は、凄いじゃない!ベストは、いくつ?僕は、93です。最近は、やっていません。今度、一度こちらにメールもらえますか?お願いします。
●info@umpire-dc.org
僕達は、決して威張りたいわけではありません。楽をしたいわけでもありません。単に”ルール通り”の審判の立ち居地が欲しいだけです。逆にいうと、我々は、ルール通りに、全てを厳しく判定しないといけないのです。お互いにがんばって、強い審判団になりましょう!
毅然とするのと威張るのとは天と地の差があります。
私もルール通りの審判の姿が見たい一人です。どこにも影響力はないですが、子供たちには言い続けたいと思います。